尊敬する人や学ぶべき人とつながり、自分の作品を送ったり、コーヒーを飲みながら話をしたり、メンタープログラムに参加したりと、それがシステム化されたメンターシップであれ、場当たり的なものであれ、チャンスを最大限に活用する方法があります。私たちは、アニメーション、実写、サウンドデザインの分野で活躍する4人の有名なプロフェッショナルにインタビューを行い、メンターシップの経験を最大限に活かす方法についてアドバイスをもらいました。

準備をしっかりする

夢中になっているアイデアがある。それは素晴らしいスタートです。次は、そのアイデアを構成していきましょう。ダンシング・アトムズ・スタジオの創設者であり、脚本家/監督/クリエイターであるヴァニ・バルガムは、明確なビジョン・ステートメントから始めることが重要であると教えてくれました。また、それは最初のステップに過ぎないので、そこで止まることなく推し進めていく必要があります。「納得いくまで、何度も何度も書き直すことです。それができたら、プロジェクトの詳細を具体化するために、自分自身に問いかけてみてください。なぜ、何を、どこで、いつ、どのように、誰が」例えば、オーディエンスは誰なのか?なぜ、このプロジェクトを遂行したいのか?など。メンターと会う前にこのステップを踏んでおけば、質問されたときにすぐに答えることができ、自分のビジョンも説明しやすく、またフィードバックがあったときにアイデアを練り直すことができます。さらに、メンターと最初から本題に入るためにも役立つでしょう。業界の多忙なプロたちは、時間や都合が限られている場合があります。なので、この「最初のステップ・早い段階で深く潜れば潜るほど、彼らと共により磨きをかけることができます」

敢えて不完全であれ

新しいプロジェクトや未知の領域に着手することは気後れすることでしょう。ましてや、尊敬する人たちの前で自分のアイデアを披露するのは、なおさらです。それはわかります。でも、そもそも彼らに披露するチャンスを得たのは、あなたの才能と決意のおかげなのです。彼らがあなたと会おうと思ったのには理由があるのです。今こそ、壁を取り払い、真の自分を信じる時なのです。

「メンターシップが始まったら、私たちを感心させようとは思わないでください。私たちはすでにさすがだなと思っているのだから、そんな必要はないのです。情熱を見せてください。でも、専門知識を披露する時ではありません。何でも知っているような人と、自分の見識を共有したいとは誰も思いません。素朴に学び、そしてより良いアイディアが出てきたときに軌道修正する勇気を持ちましょう。そして、これが唯一のチャンスだと思わないでください。そう感じることもありますが、決してそうではありません。これが特別なチャンスだと思えば、もっと上を目指そうと思うはずです。でも、これが唯一のチャンスだと思うと、怖くなってしまい、リスクを取るのを躊躇してしまいます」アニメーションの作曲家/サウンドスーパバイザー/監督であるスコット・スタフォードは、このように教えてくれます。

ソニーピクチャーズアニメーションのアニメーションディレクター兼プロデューサーであるクリス・パーンは、アイデアそのものや、自分のやり方を見つけることへの不安について、心強いアドバイスをしてくれました。「ジョセフ・キャンベルの言葉を借りれば、”正しい方向に向かっているかどうかはわかるはず”。しかし、アイデアを発展させるためには、つまずく覚悟もしなければいけません。オーディエンスの前に立つまでは、どんな決断も最終決定ではありません。旅の途中、どこを曲がってもいつでもスタート地点に戻ることができるので、迷うことはないのです。あなたのクリエーションのきっかけになったものは誰にも奪えないのですから。もし迷いそうになったら、そのアイデアを信じて、クリエイティビティのコンパスはいつも北を指していると信じてください。いつもね」

このような話を聞いていると、余計に心配になってきましたか?「もしあなたが不安で脆さを感じたら、それは正しい道を歩んでいるということです。まさに、何かを作る準備ができているということなのです」とヴァニは言います。そして、もっと直感的な揺さぶりが必要な場合は、クリスがそちらをカバーしています(ダグラス・アダムスの引用など)。とりあえず、パニックにならないでください。無理だなと思うことは、学んでいる最中だからそう感じるだけです。 目標に集中し、問題に取り組みましょう。どんな困難があっても、乗り越えられます。 大丈夫!必ずできます。大学時代、ある教師がプロセスを”泡の中で成長する”と表現していました。やがて十分に大きくなると、泡の壁を押し始め、弾けるまで不快なのです。 そして、始めのよりも大きな、別の泡に入っていき、やがては破裂する......そんなことを繰り返していくのです。泡の壁に直面しても冷静でいることで、見聞きしやすくなり、その壁をより早く破る方法が見つかるのです。パニックは決してうまくいきません。あなたが操り人形でない限り。さあ、あなたの欲するものを心から叫んでみましょう」

プロセスを信頼する

安っぽく聞こえるかもしれませんね。しかし、ヴァニもクリスもスコットもその重要性について同意しているのですから、何かしら真実があるはずです。もし、あなたがこれを読んでいて、”プロセスを信頼する”とはどういうことかと疑問に思ったなら、クリスの例えが役に立つかもしれません。彼は、クリエイティブなアイデアの道のりを、子供を育てることにたとえています。「最初は真摯に自分の気持ちにフォーカスして臨むけれど、いつかは、子供が自分の意思を持つようにしなければなりません。あなたのアイデアも同じです。どんなに良い計画を立てようとも、どんなに素晴らしいアイデアを思いついても......」

予算、時間、オーディエンス、技術、スケジュールなど、その都度調整しなければならないことが起こります。クリエイターはその時々の状況を受け入れる必要があります。最終的にはあなたの作品が、すべてのストレスを受けるのに値するものであるからです。プロジェクトの真っ只中にいると、そのプロセスに苛立ち、旅自体が最終目標にたどり着くための障害になっているように感じてしまうことがあります。だからこそ、スコットは、キャリアのさまざまな局面で、”プロセスを信頼する”ことの意味を積極的に見直すことを勧めています。そうすれば、その重要性を思い出すことができ、困難な局面に立たされたときにも見通しを立てることができるのです。

また、失敗も過程の一部であることを覚えておいてください。失敗は仲間です。クリスはこう教えてくれました。 「失敗を恐れないでください。失敗はプロセスの一部です。もし、アイデアの価値を測る基準がただただ成功というだけであれば、学ぶために必要なリスクを取らないでしょう。失敗もプロセスの一部と考えましょう。常にプラン通り取り組むことを心がけ、早い段階で且つ頻繁に、手軽に失敗するようにしましょう。そのプロセスを受け入れることができれば、アイデアの価値は高まり、納期や予算が厳しくなるにつれて、調整と引き締めができるようになるのです。アイデアは、それ自身の命を持つ必要があるということを忘れないでください。それは、あなたが常にそこにいて守ってあげなくても、自分の足で立っている必要があります。強さは、試練と奮闘から生まれます。困難なことを恐れてはいけません」

批評眼を備え考える

建設的な意見であっても、フィードバックを聞くことは難しいものです。しかし、スコット・スタフォードが適切に説明してくれています。「メンターは、あなたの成功を心から願っていることを忘れないでください。たとえ一言一句忠実に守らなくても、アドバイスを心に留めておくことです」この後者の部分は、さらに探求する価値があります。メンターは、自分の持っている情報をもとに知識の及ぶ限り、最善のアドバイスをしてくれます。しかし、私たちと同じように、彼らも完璧ではありません。クリス・パーンは、そのことも心に留めておこうとアドバイスしています。「アドバイスを盲目的に受け取ってはいけません。私は人生でいろいろなことを経験しましたが、あなたではありません(これからもそうです)。これはあなたの旅なのです。ある人がメンターに求めるものと、別の人が求めるものとは異なります。

そして、メンターシップの目的は、あなたのアイデアやプロジェクト、またはあなた自身の成長を手助けすることです。そのためには、相手の言葉に耳を傾け、それを吸収・処理・解釈することが大切ですが、自分が実現しようとすることに役立つと感じたことだけを実行に移しましょう。自分が主役なのです。「YESと言って、NOと言わず...考える。それから、そのアイデアのために必要なことをする。会議ではしばしば、なにかしら行動を起こさなければならないと感じることがあります。目標はオーディエンスとつながることであり、人の数だけ無数にある意見に振り回されすぎないようにしましょう。アイデアの親であるあなたの仕事は、できるだけ自然な方法でアイデアを成長させることです。そのため、すべての人をハッピーにすることはできないということを心に留めておいてください。 しかし、フィードバックは、こういった理由で貴重なものとなります。それは、冷めたオーディエンスに対して、自分が考えていることを言っているのでしょうか?オーディエンスとつながっていないというフィードバックをたくさん得ている場合は、信頼し、次に聞く、そして最後に...立ち去り、考えることを強くお勧めします。あなたの仕事は、メモをくれた人を喜ばせることではありません。 そのアイデアをより良いものにすることです。 だから、行動する前に、準備をしましょう。 30分の散歩でも、一晩の睡眠でも...。消化し、考えることは、無為無策ではありません、必要なことなのです。

ポリゴン・ピクチュアズ代表取締役兼CEOの塩田周三氏も同様に、自分自身で考え、実装アイデアや解決策を求めるのではなく、新しい思考プロセスやアプローチを探求・発見することを推奨しています。「メンターに "どのように "やったのかを尋ねるべきではありません。その”どのように”は、”何”を作ろうとしているのかによって決まるからです。その”何”は完全にあなた自身のオリジナルであるべきです。なので、その質問は無駄なものです。その代わり、あなたのメンターが”なぜ”そうしたのかを聞いてみてください。彼らの思考プロセス、影響、文脈、葛藤を掘り下げてみてください。自分の”なぜ”を考えることで、”何”をつくりたいのか、それを”どう”実現したいのか、あなた自身のビジョンが見えてくるはずです」大変重要なアドバイスであり、明らかに頷けます。「すべての気づきは有効ですが、解決法のほとんど(99.9%)はそうではありません - オーディエンスに耳を傾け、常に......、常に、自分の考えで物事を解決すること。 そして、始めのアイデアに戻り、自分のリズム(あるいは信頼できるチームのリズム)に完全に合わせられるまで、動いてはいけないのです」とクリスは付け加えました。

そして、批評眼をもって考えるということは、一歩下がって客観的に物事を見るということでもあります。例えば、「問題の重要性と自分の関心度合を同等に扱わないこと。細部にまで取り組み、最も知らないことには2倍の時間をかけるよう努力しましょう」とスコットは念を押しています。同じように、自分が慣れていることであれば、一人でプロジェクトを進めたいと思うかもしれません。はたして、本当にそれがベストな方法なのでしょうか。プロジェクトの戦術的な意味だけでなく、自分の健康や幸せにおいても、長所と短所を比較検討することが大切です。スコットからのアドバイスは、すべてを自分でやろうとしないということです。「共同制作者を見つけ、力を借りましょう。そうすることで、より多くのことを学び、その結果、自分一人でできることよりもずっと良いものができるはずです」また、同じ志を持つ仲間と一緒にプロセスや経験を共有し、素晴らしい時を共にすることができるのです。

フィードバックは宝物

「たくさん質問しよう。フィードバックは宝物!」と、ヴァニは力強く語ります。もしあなたがシャイで控えめ、物腰が柔らかい人なら、何かを発言することは克服できないタスクのように感じるかもしれません。しかし、学び成長するためにメンターシップのチャンスを求めてきたはずです。あなたが何を考えているのか、何を必要としているのか、誰も知らなければ力を貸すことはできないのです。そして、リラックスしてください。プレッシャーを感じる必要は全くありません。「私たちは助力するためにいるのですから、プロセスの多くは会話であるべきです。私はいつも、一緒に仕事をするアーティストに、私が間違っていることもよくあるからね、と伝えます。初めは新しいアイデアに関心がなくても、3日経つ頃には興味が湧いてくるかもしれません。そして会話はとても大切で、お互いの絆を深めるだけでなく、アイデアを成長させるためでもあります。」メンターは、”正しい”や”間違っている”と判断するためにいるのではありません。あなたのアイデアを成長させるための解決策を見つける手助けをするためにいるのです。だから、頑張って質問してください。そして、プロセスを噛み砕き分解し、直したいと思っている事柄をより深く理解しようと努めてみましょう。プロセスが会話になればなるほど、みんなが守りに入らず、より素晴らしいものを生み出すために力を注ぐようになるのです。声をあげましょう! 私たちは、あなたのメッセージを後押しするためにいるのですから。 

また批評を受けるということは、神経がすり減るようなことですが、そのメリットはデメリットをはるかに上回ります。信頼できる人と、安全で協力的な環境で話をする場合は、特にです。「プロセスを信じ、自分のアイデアを信じるならば、"作り手 "であるあなたの仕事は、伝えたい相手の声に耳を傾けることです。痛みを伴うこともありますが、セメントが固まった後で真実を受け取るよりも、まだ調整できる段階で正直になってくれる方がずっといいのです。聞けば聞くほど、自分のアイデアが固まっていくのでより賢明になれるのです」と、クリスはこう言います。

実用的な話として、スコットは付け加えます。「きっとすべての会話の内容を覚えておきたいと思うでしょう。しかし、メンターシップのセッション中にメモを取ると(Sony Talent Leagueのやりとりに基づくと)、流れを中断してしまい、本当の意味でその場にいることができなくなることがあります。一方、ぼんやりしていると忘れてしまうこともあるでしょう。提案:セッションを毎回録画し、一度だけ聞き返しメモを取る。やってよかったと思うはずです」。素晴らしいアドバイスですが、この提案を適用する際には、メンターシップの文脈を見極めることが大切であることを忘れないでください(設定や状況によっては、使用に適さない場合もあります)。また、メンターにやりとりを録画してもいいかどうかを尋ね、その録画したものをどのように使用するかを事前に説明する必要があります。透明性と誠実さは、信頼を築くのに大いに役立ちます。

休憩を取る

何かに熱中するということは、ワクワクしますが、同時に疲れることでもあります。たまには距離を置き、充電することも大切です。「忘れないでください。あなたはオーディエンスのために作っているのです(短編を作っていようと、最新ハンマーを開発していようと関係ありません。やろうとしていることは自分のためだけではないということです。世の中に発信し、人々に受け入れてほしいと思っています。)従って、長時間近くで見つめすぎることは不健康なだけでなく、クリエイティブプロセスにおいても良くありません。脳を散歩に連れ出す時間を見つけましょう。呼吸するための空間や、このプロジェクトにおいて、作り手以外の何かになるためのスペースを探しましょう。クリエイトしながら生活することで、問題は折りたたまれ、自分の住む世界と共鳴を見出すことができます。そうすればもっと健康に、クリエイティブアイデアが育つための肥やしとなるのです」と、クリスは言います。

大切な事はあまり多く語られませんが、おそらく誰もが遭遇したことがあることでしょう。「愛が冷めても驚かないこと!よくあることです。制作がうまくいかず、アイデアを揺りかごの中で絞め殺したくなるような瞬間もあるはずです。でも、アイデアを信じてください。愛があることを思い出して、自転車に乗りに行きましょう。あるいはランニングでも大丈夫です。おかしくならないように、何でもトライしてください。こんなはずじゃないと思うのは当然です。でも愛は必ず戻ってきます。約束します!」と、クリスは安心させてくれます。

フォローアップ

スコットのメンターシップの定義は、「百戦錬磨の専門家とワークショップする機会により、よくある問題を回避でき、アイデアを磨くことができる。またアイデアを成長させるチャンス」であり、同時に「その過程で築かれる人間関係」であると、Sony Talent Leagueについて質問した際に答えてくれました。メンターシップの形態や期間は様々ですが、知識のある素晴らしい人たちとつながり、彼らから学ぶことができるというのは、すべてのメンターシップに共通する本質です。そして「メンターやその道のりで出会った人たちとは、常に連絡を取り合うこと!」というのも同じ論理です。 私たちは、あなたから色んなことを聞きたいのです。メンターと強い絆で結ばれていれば、彼らの生活がどんなに忙しくても、一緒に取り組んだプロジェクトの進捗状況を知りたいと思うはずです。臆することなく連絡してください。

遊びを忘れない

年齢を重ねるごとに、生活の中での遊びの重要性を忘れがちになります。クリスが言うように、それは大切なことです。「楽しむこと!安っぽく聞こえますが、本当ですよ。人生のこの瞬間はつかの間であり、クールなものを制作できる状況にあることは非常に幸せなことなのです。遊びの価値を過小評価しないでください。楽しさがどこにあるのか、愛がどこにあるのか、それをいつも思い出すことができれば、その楽しさをオーディエンスに伝えることができるのです。」

というわけで、賢者からの言葉、そして学ぶべき人々からのアドバイスを得るためのいいキッカケになればと思います。優しく、思慮深く、誠実に人々に接し、ここにある方針を取り入れながら、あなたのファンやサポーターを増やしましょう。素晴らしいではありませんか!