こんにちは!再びTHUから皆さんへお届けします。他に言いようがないので、ストレートにお伝えします。あなたは、自分自身の邪魔をしているかもしれません。そう、文字通りの意味で。1)プロジェクトや作品が「完成」かどうかわからない。 2)変更と改良の永遠のループにはまっている。 心当たりのある方、続きをどうぞ。
クリエイターである私たちは、無意識のうちに「完成」という考えに囚われていて、世の中にモノを出すことを避けてしまいがちです。そして、批判や失敗を避けようとすることで、本当にしていることは、自分の可能性を発揮することを妨げているのです。それは、完璧主義を装った自己妨害なのです。
それは若いクリエイターだけが経験することなのでしょうか。それとも、レジェンドと呼ばれるクリエイターにも起こることなのでしょうか?私たちは、カーラ・オルティズ、ナデージャ、キム・ジョンギにアドバイスを求めました。また、現在、プロジェクトを実現するため最終プレゼンの準備に取り掛かっているSony Talent Leagueのファイナリストたちにも話を聞きました。
自分の作品が完成し、ペンを置く時が来たと、どのようにしてわかるのですか?
ナデージャ:直感的な判断です。その時々のタイミングでやって来るものです。もしパイを作っているのであれば、レシピに記載された一定の時間で「完成」とみなされます。創造的な活動にはレシピはなく、それぞれの作品には潜伏期間から開花までの時間軸があります。何日も、時には何カ月もかけて仕上げることもあれば、数時間しかかからないこともあります。作品に取りかかるたびに「今回の過程がどのくらい続くかわからないけれど、一歩ずつ前に進み、ある時振り向いてみると、まったく新しい道(私の場合はペインティングやドローイング)を歩んできた自分がいる」と、自分自身に言い聞かせています。また、完成に近づいているなと思うたびに、少し疑ってみます。なぜなら、「完成」の定義を自分の理性的な意見だけに頼りたくないのです。直感と作品自身がその時々に教えてくれます。そのような制作の仕方は、自分との会話そのものです。そして、作品と私の両方が納得した時が「完成」です。
カーラ・オルティズ:「締め切りが来たから、クライアントに送らないと怒られちゃう」というような簡単な時もあります。しかし、締め切りがなく、時間がたっぷりあるとしましょう。私には”フォーカルポイント(作品の中心となる部分)”が、まさに自分が納得できるレベルの仕上がりになっているかどうかという点で、具体的な基準があります。ディテールにこだわり、レンダリングを重ね、すべてがしっくりときているかどうか。そして、フォーカルポイント以外は、ものすごくレンダリングされている必要はありませんが、少なくとも正しい形と正しい色値であることが大切です。フォーカルポイントが完成し、絵の中にあるすべてに触れ考え抜いた後、「もっと作業を続けると、この絵はもっと良くなるか」と自分に問いかけます。なぜなら、やりすぎるというリスクもあるからです。
キム・ジョンギ:まず、自分の頭の中で構築したイメージがすべて紙に描けたと確信したとき。それでも、描き終えてペンを置くことができるタイミングは、いつも苦心します。空白を埋めることに慣れてしまっているので、余白を残して終わることも同じように難しいとよく思います。いつ止めるか、止めるべきタイミングを見つけるのはいつも難しいのですが、最近は、頭の中で計画したイメージをすべて描ききったという感覚を得たとき、自分のドローイングを「完成」と定義しています
クララ・ヴィオール:正直なところ、何に置いても「完成」はないと思うのですが...。できる限りのことをしたと思って、ペンを置くしかない気がします。STLの場合、特に申し込みの過程は文字通り「完成」とは正反対で、どちらかというと「いいんじゃない?」という曖昧な気持ちだったと思います。メンターに作品を見せることについては、「せっかく助けてくれるのだから、完璧なものを見せる必要はない」「やり方が分からなくて迷っているなら、それこそメンターの出番だ」という考えでいます。何でも知っているように振る舞っていても何も得られませんが、正直かつ不完全であることで、うまくいくこともあるかもしれません。
改良の永遠のループに陥り、プロジェクトを「完成」とみなし、世に送り出すことは難しいと思うことはよくありますか?
キム・ジョンギ:毎回ですよ。描き終わったと思っても、満足でない部分をすぐに見つけてしまうんです。でも、ダメなところを見つけすぐに修正していたら、いつまでたっても作品は完成しません。なので、その場で関心を断ち切り、どちらかと言うと無情に絵から目を背けます。そして、その「納得いかない」部分を頭の中にキープして、次の作品に取り掛かる時は同じ失敗をしないようにしようと思っています。
ナデージャ:私のプロセスには、直感的で継続的な改善のためのスレッドがたくさんあり、通常それらは「ループ」にはならないのですが、確かに時々絡まってしまうことがあります。行き詰まり、どうしたらいいかわからないときは、その作品を脇に置いて休ませておきます。別の作品に取り掛かっている間(私のスタジオでは、常に数枚のペインティングが同時進行しています)、潜在意識の助っ人が行き詰っている方の問題を解決してくれます。しばらくして、時には数日、あるいは数ヶ月経ってから、再びその作品に近づくと、解決策が提示されているように見えるのです。この「行き詰まり」は、極度の疲労の兆候である可能性もあります。そういったときは、すべての創作活動を一時中断して、何か別のことをします。外に出て、自然を眺め、本を読み、庭仕事をし、友達に会います。これは、私の潜在能力やクリエイティブな源泉が枯渇していて、補充する必要があるというシグナルなのです。そのような時は、必ず休憩を取るようにしています。疲れているにもかかわらず無理に創作活動をしようとすると、クリエイティブバーンアウト(燃え尽き)が長引き、いいことや楽しいことは生まれません。
カーラ・オルティズ:時間があるときは、1週間くらい間を空け、もう一度そのペインティングについてどう思うか自分の気持ちを確認します。なぜなら、描いた直後は感情的に入り込んでいて、たいてい翌日には「ああ、こうすればよかった、直さなきゃ」と思い、かえって悪化させてしまうことがあるからです。そこで、1週間ほど離れてみると、ポジティブにせよネガティブにせよ、驚きを見つけられるだけの余裕が生まれることに気づきました。また、時間が経つにつれて、自分の作品をより優しい目で見ることができるようになります。何年も前に描いた絵を今見ると、なぜあんなに怒っていたのか、なぜあんなに自分を責めていたのか、と疑問に思います。ですので、時間が少しポジティブにさせてくれると思っています。
ポーラ・ボナバル(STLファイナリスト):全くないです!むしろ、私は常に全体像を見ているタイプのアーティストなので、細かいことにはすぐに飽きてしまうのです。全体像というのは常に魅力的なコンセプトです。アウトラインや”アイデア”がすでにあると、あとは実行するだけ。ついつい次へ次へと行きたくなるんです。チームで仕事をする場合、ディテール指向の人とアウトライン指向の人がいることが重要だと思います。
「準備万端ではない」と感じるような状況を経験したことがありますか?
ナデージャ:これから起こることに対して完全に「準備万端」になり得るとは思いませんが、運というものは勇気を好むものです。自信喪失は多くのアーティストに共通するものですが、それでも強くなり、チャレンジし、ベストを尽くすことは私たち次第なのです。失敗を恐れることは、クリエイティビティを強張らせる要因です。夢を追いかけることも、自分の可能性を最大限に発揮することもできません。迷ったときは、「失敗は改善のチャンスだ」と自分に言い聞かせます。人生に確かなことなど何もありません。私たちにできることは、恐れずその時々の自分の能力を最大限に発揮することです。もし失敗したとしても、それを落胆や敗北ではなく成長としてとらえることができるかどうかは、私たち次第なのです。
キム・ジョンギ:私は、準備万端の状態でプロジェクトを始めることはほとんどありません。だから、絵を描いていると自分の力不足や知識のなさに気づかされることがあります。逆に、たくさんの準備や参考資料があれば、それは助けになりますが、同時にある種のガイドラインになり想像力を邪魔してしまいます。ですからこれらには、あまり依存しないようにしています。最終的なドローイングが自分のイメージ通りであることもあれば、そうでないこともあります。先ほども言ったように、ドローイングが完成したら、ずっとそれにこだわらないようにしています。出来上がったら、すぐに頭の中から追い出すことで、次の作品に取りかかることができるのです。
カーラ・オルティズ:面白いことに、チャンスが訪れるとき、心構えができているということはありません。基本的に、人生が運んできてくれる”大きな”チャンスに対して、完璧に心構えができていると感じることはないでしょう。私もそういった大きなチャンスを前にした時、そう感じてきました。「大丈夫かな」という迷いが今でもありますが、私の原動力のひとつは「後悔したくない」ということです。もし怖くて大きなチャンスから遠ざかってしまったら、将来、絶対に後悔することになるし、そんな人生は送りたくないと思っているんです。未知なるものよりも、後悔することをもっと恐れています。
グレイシー&エリザベス・ディックス(STLファイナリスト):Sony Talent Leagueに応募しようと決めた時、今のこの場所にいることなんて想像もしていませんでした。もちろん自分たちのプロジェクトが大好きで、子どもたちの学習への関わり方を変えられると心から信じていますが、最初からこれほどまでに熱烈なサポートを受けられるとは夢にも思っていませんでした。
チャンスに踏み切れない、またプロジェクトを「完成」と宣言できない、そんなアーティストにメッセージをお願いします。
ナデージャ:創造的な孤独を実践する。つまり、クリエイティブな空間で一人になって多くの時間を過ごすことです。自分自身を知ることです。文章を書く、スケッチする、考える、読む、こういったことを毎日実践し、そこから強い自己感覚を育みましょう。アートや創造性について自分の意見を展開させ、失敗も成長のための必要な手引きとして受け入れましょう。
カーラ・オルティズ:アーティストにとって、自分なりの具体的な基準を持つことは大切だと思います。作品において、何が自分をハッピーにしてくれるのかを明確にし、時にはそれをチャレンジに広げていきましょう。成長し続けることは大切なことですからね。
キム・ジョンギ:人は、自分が完璧ではないことを感じているから、あるいは知っているからそういう風に考えるのだと思います。それでも、完璧でありたい、もっと上手に絵を描きたいと思うのです。また、他人と自分を比較することも大きな要因だと思います。もちろん、私も同じような感覚を持っていましたが、時間が経つにつれて自然と薄れていきました。ただ、すぐには完璧になれないということを認識し受け入れるようにしました。そして、他人ではなく、まず自分を満足させるよう心がけました。自分が満足でき、気楽な心で描き続けられると、アーティストとして長い間楽しくやっていけると思います。
ジェイド・ジョンソン(STLファイナリスト):人生において、時間というのは過ぎていくのだから、その時間が過ぎていく中で、自分が本当にやりたいことは何なのかを考えてみてください。起こり得る最悪の事態とは何なのかを考えてみてください。たとえ失敗すると思っても、全ては学ぶためであって、必ずしも勝つためではないと思います。今回STLに参加して、いくつかの本当に貴重な学びを得ました。勝つために参加しているのではなく成長するために頑張っていて、まさにそれが起こっているのです。
筆者からひとこと:この記事を”完成させる”のは大変だったと思いますか?はい、大変でした。でも、締め切りがあったこともラッキーでしたし、何より自分の考えをシェアするために時間を割いてくれた素晴らしいクリエイターたちに感謝し、彼らの言葉に触発されて、この記事の「公開」ボタンをクリックすることができました。もしまだこちらを読んでくれているなら、joana.vale@trojan-unicornまでご連絡ください。私自身が抱えるインポスターシンドロームに、これを読んでいるみんなが本当にいるんだぞ、と知らせてやります。失敗を恐れるというみんなが持っている共通の恐怖心を受け入れ絆を深めましょう。バーチャルハグ!!